風来ガール、なんか書く。

ベイビー・ブローカー

올해 가장 특별한 여정의 시작 [브로커] 30초 예고편 - YouTube

※ネタバレ含みます。

ベイビー・ブローカーを見た。
赤ちゃんを売る話。

趣味で行っている語学カフェの韓国語テーブルで会った人が、「ポスターのソン・ガンホが笑顔であればあるほど、悲しい映画らしい」と言っていて、今回のポスターではソン・ガンホが赤ちゃんを抱えて、真っ白な歯を見せて、満面の笑みを浮かべていたから、さぞかし悲しくて暗い映画なのではと身構えていた。

映画でも本でも、感情が動くとわりとボロボロ泣くタイプなので、重すぎる映画はだいぶ元気じゃないと見れないし、1人より一緒に見てくれる人がいるほうがいい。

徳恵翁主(トッケオンジュ:朝鮮王朝最後の皇女の話)、ジョーカー、パラサイトを見たときなんかは、映画館を出るときもズーンとして、出た後もなんとも言えない気持ちを抱えてちょっと引きずった。

ベイビー・ブローカーを一緒に見た友人が、エンドロールが始まってすぐに言ったのは、「めっちゃ열린 결말(ヨルリンキョルマル:開かれた結末)ですね」。

たしかに、登場人物がどんな未来を生きるのかは分からない部分が多いが、個人的にはわりと明るい気持ちで見られた。

もちろん、考えさせられる内容だったし、悲しい内容もあった。社会のいろんな局面をぎゅっとつめた作品だったけれど、絶望や悲観だけがあるのではなくて、希望もあったと思う。

 

印象的だったシーンは2つ。

「結局赤ちゃんを1番売りたかったのは、自分だったみたいだ」と警察官がこぼすシーン。人身売買の現場を現行犯逮捕するために裏で色々と動き、赤ちゃんを売る旅に出た彼らを尾行した彼女が言った言葉が印象的だった。

もう1つは、「生まれてきてくれてありがとう」と言うシーン。
事情があり自らの子どもを手放さないといけない母親に、赤ちゃんと別れる前の最後の夜に、赤ん坊に一言かけてあげたらどうだ、生まれてきてくれてありがとう、とか、とソン・ガンホ演じるサンヒョンが促す。最初はためらうが、イ・ジウン演じるムン・ソナはその部屋にいる全員へ「生まれてきてくれてありがとう」と言う。

生まれてきた命を、捨てるくらいなら産んではいけなかっただろう、と言う警察官と、生まれる前に命を奪ったから罪が軽いのかと言う母親の口論や、赤ん坊を売るのは善意だというブローカー、6歳を超えたら貰い手がいなくなる、という養護施設の施設長。赤ちゃんを売ること、子どもを捨てることに対して、いろんな言葉や感情があってからの、最後の「生まれてきてくれてありがとう」。

あまりにもむず痒い言葉だけど、人間は生きていたらなんで自分はこの世界に生を受けたのだろうと1度は考えると思う。生きる目的について考えたり、もがいたり。「生きる」ことに必死で向き合うけど、その理由や、背景は全部置いておいて、生まれてきてくれてありがとう、と言われたとき、同じ部屋にいたおじさんも、若者も、子どもも、みんなが、幼子の顔に戻ってその言葉をじっくり受け止めて、子どもを捨てる母親は誰よりも母親の顔をしているその瞬間がすごく忘れられないな、と思った。