「The Third Door」秘訣をもたないことが秘訣
「何がしたいのか」なんて問いはあいまい過ぎて、やるべきことや意味ある答えなんて見つけられない。そんな問いは忘れてしまえ。
「目標は何か」という問いも、同様にいい加減で適当な答えしか出せない。この問いを改めて考えるには、一歩下がってより大きな視野に立たなくちゃいけない。
幸福の反対は何だ? 悲しみ? そうじゃない。愛と憎しみが表裏一体であるように、幸福と悲しみも不可分のものなんんだ。
愛の反対は無関心だ。そして幸福の反対は「退屈」で決まりだと思う。 幸福の同義語は興奮だと言ったほうがいいかもしれない。興奮こそ、まさに僕らが懸命に追い求めるべきものであり、万能薬なんだ。みんなが君に、「情熱」や「幸福」を求めて生きろと言うとき、それは究極的には「興奮」という概念に行き着くんだ。
「サードドア」 という本の一部だ。正確にはサードドアの著者アレックス・バナヤンが「強力な一節」と紹介した、「週4時間働く」という本の抜粋である。前半部分で紹介されている一節であるが、とても心に響いたので忘備録としてここに書き留めておく。
この部分を読んでみて思ったのは、「何がしたいか」なんていう質問は無意味で、何がしたいか分からないって言っている人は行動を起こしていないだけで、何をしたいかは自分が1番分かっているってことなのかなということ。
この部分を読みながら「未来が不安なんて暇人の言うことだ」という恩師の言葉を思い出した。
前にこの本をオススメしてた人がいたなと思って、冬休みに「サードドア」を読んでみた。内容は大学生だった著者が世の中の ”成功した人” は、なんで成功したんだろう? 直接聞いてみたい! と思って著名人へインタビューを試みるという内容だ。
「あなたはどうやってキャリアを踏み出したのか ――」
「サードドア」の紹介文だ。多分多くの人は「成功の秘訣」みたいなものを求めて最初はこの本を手に取るのではないかと思う。実際私もそうであったし、このインタビューを始めたころのバナヤン氏も、そのとびっきりの「秘訣」を求めてインタビューを始めたと本の中で話している。いわゆるHow to本みたいな感じで、その一、〇〇をせよ!その二、〇〇が大事...みたいな調子で、成功の法則があると思ってインタビューをはじめた若きバナヤン氏が、やっとこぎつけたインタビューで法則も秘訣も聞き出せぬまま、「僕が望んでたのと違うんだけど...」と頭を悩ませる姿はくすりとも笑えるし、その等身大の姿に読者が自分の姿を重ねて様々なメッセージを受け取ることができるのが、サードドアの魅力なのではないかと思う。
私自身も成功の秘訣とかが書かれてるのかなと思って本を手にとったが、読み進めていくとインタビューや、人との関係性の築き方がメインの話なのだと感じる。最後にはいわゆる成功者にスポットライトを当てた話ではなく、自分の家族、友人の話が書かれている。数ページに及ぶ謝辞では、彼がプロジェクトをはじめてからお世話になった、もの凄い数の人へ向けた感謝のメッセージが綴られている。謝辞を寄せた人の中には、本の中に頻繁に出てきて本を読み終えるころには、親しい友人のように感じられる人もいれば、読者が知らない人もいる。知らない誰かへ向けられた感謝のメッセージなのに、ここまで心が揺さぶられるのだから不思議だ。
最初は「成功」を求めていた彼が、最後には家族と友人、そして自分を支えてくれた全ての人への感謝を述べる。そこに彼が人を引きつける理由なのではないかと思った。
本の中でバナヤン氏がトークの帝王と呼ばれるラリー・キング氏にインタビューの秘訣を聞くと、キング氏は ”秘訣をもたないことが、秘訣だよ” と答える。ここが私が1番好きなシーンだ。私はここに全てが詰まっているのではないかと思う。
デンマーク語に Oplysning (オプリュスニング)という言葉がある。デンマーク語で”教育”を表す言葉で「自分を照らし、相手も照らし、お互いに成長する」という意味だそうだ ( 参考:ラーンネット グローバル スクール ) 。Oplysningは先日聞かせていただいた対談を通して学んだ言葉だ。対談の中である方が ”自分が自分でいたら明かりは自然に灯る” という話をされていた。自分が自分らしくあることで灯された光が、他の人を照らし、光の輪が繋がっていったら素敵だよね、そんな話をしながら対談が終わったのだが、まさにその対談自体がお互いを照らし合うような素敵な時間であった。
キング氏が秘訣をもたないことが秘訣だと語ったように、”自分らしくあること” が1番の秘訣で、”自分らしくあること” で灯された自分の光が、相手を照らし、光の輪が広がっていくことが、人々を最も幸福にすることなのではないかと思う。お金、名誉、地位...成功の測り方は人それぞれだと思うが、私は心に強く灯された光をもつことを成功だと言いたい。
最後にバナヤン氏が数年間に及ぶインタビュープロジェクトを通して見つけた成功者の共通点をシェアしてこの記事を終わらせようと思う。
人生、ビジネス、成功。
どれもナイトクラブみたいなものだ。
常に3つの入り口が用意されている。
ファーストドア:正面の入り口だ。
長い行列が弧を描いて続き、
入れるかどうか気をもみながら、
99%の人がそこに並ぶ。
セカンドドア:VIP専用入り口だ。
億万長者、セレブ、名家に生まれた人だけが利用できる。
それから、いつだってそこにあるのに、
誰も教えてくれないドアがある。
サードドアだ。
行列から飛び出し、裏道を駆け抜け、
何百回もノックして窓を乗り越え、
キッチンをこっそり通り抜けたその先に―― 必ずある。
ビル・ゲイツが初めてソフトウェアを販売できたのも、
ハリウッドで史上最年少の監督になれたのも、
みんなサードドアをこじ開けたからなんだ。